イチゴの土耕栽培と高設栽培

こんにちは。イッチーです。

私が農業を勉強していたころ、一緒に作業していた農家のおばあさんと話をしていたとき。

そのおばあさんが、イチゴの高設栽培(長いプランターのようなモノを高い位置に並べて栽培する施設栽培)について、

「わざわざ別の土を持ってきて地面の上に並べてつくるなんて、もったいない。農業は、その土地でやるもんだ。」

と、おっしゃったその言葉に、その時、私は感銘を受けたのです。

思えば、それが、私の失敗の始まりだった気がします。笑

就農3年目の私が思う、私の最大の失敗は、

土耕栽培(普通に地面で畝立てをしてイチゴを栽培する方法)で始めてしまったことです。

今回は、その土耕栽培と高設栽培について、思うことを書こうと思います。

 

「収量が圧倒的に違う」

まず、収量ですが、やはり、高設は水や肥料をコントロールしやすいです。

とくに、水は、苗の成長だけでなく、イチゴの実は90%が水分ですので収量に大きく影響します。

また、イチゴの実のなり方が、土耕はイチゴが床に触りますが、高設ではぶら下がる形ですので、デリケートなイチゴが傷つきにくくロスが減ります。

またイチゴはストレスなく綺麗な形を形成できます。

あと、高設では、ナメクジ、ネズミ、タヌキといった害獣による被害がほとんどありません。

あと、高設栽培では培土の温度が下がるのを防ぐために、土を温めるシステムがあります。

これには、燃料コストがかかりますが、

しかし、早期出荷を可能にすることができます。

土耕では、土の温度はコントロールは困難です。

こういった理由から、収量や単価に大きく差が出ます。

 

「労力が圧倒的に違う」

次に労力です。じつは収量以上にこれが重要です。

まず、収穫にかかる労力が雲泥の差です。

時間にすると、倍くらいは違います。

腰を曲げて足元のイチゴを摘んでいくのと

腰の高さにぶら下がったイチゴを摘むのでは疲労も所要時間も違います。

イチゴの繁忙期である収穫時期は、収穫とパック詰めの作業が仕事時間の大半を占めます。

収穫時間を大幅に短縮できるというのが、高設の最大の利点と言ってもいいかもしれません。

また、キズが少なく綺麗なイチゴが取れる高設栽培は、パック詰めもスムーズですので、土耕のイチゴよりも、パック詰めも速くなります。

その他の作業。苗の手入れ、苗の片付け、土壌消毒、耕耘、なども、全て土耕より高設のほうが楽です。

イチゴ農家の苗作り以外の部分においていえば、高設は仕事量を30%以上は軽減できると見ています。

 

「設備費用が圧倒的に高い」

では、高設栽培のデメリットはなんなのか?

まず、水や肥料不足への苗への反応が早いことがあげられます。

土耕にくらべ急速に培地の変化が起こるので管理には注意が必要になります。

つぎに、設備自体がすごく高く費用がかかる。というのが最大のデメリットです。

現在は資材原料の価格高騰(本当かは謎、笑)を理由に、1反の設備費用は約1000万円!(マジか!笑)

ハウスは別で、飽くまで高設栽培用の設備の設置価格です。

これは補助無しの金額ですが、下手したら家が一軒建つ価格ですね。笑

高設栽培で反収益を50万円上げて、それを支払いに当てたとしても、返済には20年以上かかるという、アホのような設備です笑

ですから、通常、農家さんは補助金を活用します。そうしますと、これが50%〜70%の補助金が出ますので、負担額は500万円〜300万円程度となります。(なんかの下取りキャンペーンのように、騙されてる感満載ですが‥笑、)

まぁ、業界の闇については詮索してもしかたありません。

 

「結論」

高額な費用がかかる高設栽培ですが、

イチゴ農家をずっとやるつもりならば、必須設備だと感じています。

個人的な意見をいえば、高設栽培でないなら、イチゴ農家になるのはやめたほうがいいかも‥とすら思います。

ですから、新規就農でイチゴをやるなら、

できるかぎり「高設栽培施設を探し借りる」

もしくは、「始めから融資を受けて高設栽培施設を導入する」のが良いかと思います。

身をもって土耕栽培の大変さを体験したいならば、試してから検討しても良いとは思いますが、実はこれが落とし穴です。

なぜなら、土耕栽培しかやってなかったら、高設栽培との比較はしようがないからです。

それに、土耕栽培に使う資材や機械が、のちに高設栽培に転換した際は無駄になります。

(私は、高設栽培の農家さんの手伝いをしたこともありますし、すぐ近隣に高設栽培の方がいるので、その方々を観察した結果、高設のほうが良いと考えるのですが)

確かめたい方は、ぜひ高設栽培の農家さんにこう訊ねてみてください。

「土耕栽培を、またやろうと思いますか?」と。

では!!